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- 2013.12.10
- - 忘れられぬ光景 シマリス編 - (十勝シリーズ:第6話)
前編の赤ハラも夢か幻か未だに釈然としないと書いたが、それに負けず劣らず目の前の出来事を素直に受け入れられない場面に出くわしたことがあった。世の中不思議なことが多々あるのだろうが、前編の赤ハラは複数の人間が目撃しているから、個人の単なる妄想と一蹴されることはないだろうが、今回の話は自分の目の前で起こったことを追認してくれる目撃者は誰もいなかった。私ひとりが目撃した。
◆本当にホント
これから書くことは、嘘と思われるかもしれないが本当に起こったことなのである。
それは私の職場である美里別( びりべつ )郵便局へ向かう途中の橋の手前で起こった。橋が架かっている美里別川は過去何度も大きな洪水で河川の氾濫があり、その度に丸太橋は流され地域の交通は遮断されていた。それでも昭和40年代中頃には立派なコンクリートの橋脚で作られた橋が完成していた。
信じられない光景に出合ったその場所は橋に向かって右手後方に季節保育所(当時は夏場のみ開設)があり、そのまた奥には全校生徒20名ほどの中学校があった。左手は美里別川に注ぐサルカニ川の最終地点で、長い年月の間に幾度となく繰り返された河川の氾濫で山の左側が深くえぐれていた。
そこへ上流から運ばれた岩石や玉石が無秩序に敷き詰められ川幅を狭くしていた。
右手後方の季節保育所の周りからサルカニ川の最終地点までは、季節保育所が出来る前は手つかずの土地であった。そのため背丈の高い草木が深く生い茂っていた。そこはまた、地域でも珍しいカラスヘビの生息地になっていた。カラスヘビは敏捷性と黒色の個体から毒があると思われており、人が足を踏み入れるのをためらう場所でもあった。それでも季節保育所が開設されたことから保育所の周りは
整備され、カラスヘビも駆除されて子供たちも安心して遊べる場所になっていた。
◆ウッソー有り得ない
季節はヤマグルミの落ちる初秋の晴天の昼下がりであった。
それは突然始まった。前方の6メートル幅のアスファルト道路にシマリスが現れたと思ったら瞬く間に一本の線となり、猛烈なスピードで次々と道路を横断して行くではないか。初めて目にした光景にシマリスに集団移動という習性があるのかと思いを巡らせつつ、驚かさないようにじっと身を固めて見ていた。
ところが終わらない、二分経っても横断が続いている。ウッソー有り得ないと思いつつ、この異常な光景に見とれていた。しかしこの光景がいつまで経っても終わらないのである。一体何百匹あるいは何千匹単位のシマリスの移動なのか全くもって信じられない光景であった。
自分の感覚では15分も続いていたように感じているが実際は5分程度だったのかも知れない。しかし驚いた、この山にこれだけのシマリスが生息していたのか、しかも何のために集団で一列になって道路を横断する必要性があるのか、皆目見当もつかなかった。ただ必死になって起きている事態を自分なりに納得できるように整理しようとは思った。
◆シマリスに聞いてくれ
きっと山を隔てる道路の右側の土地は餌を食べつくしてしまったのではないのか、若しくは何かしらの危機が迫っていて緊急に移動する必要があったのではないのか、はたまた繁殖のためなのか。あれこれ考えても確信の持てる答えは導き出せなかったが、事実として山を隔てるこの道路を集団で横断する必要性があったこと。そしてそれは独立した小集団ではなく、山単位でのシマリスの集団移動であったこと。またそうしなければならなかった理由がきっとあること。この事態を受け入れる説明をあれこれ考えたがやはり分からない。シマリスの生態はシマリスに聞いてくれとしか言いようがなかった。ただ私でなくともこの光景を見てしまったら、きっと長く記憶に留めるに違いないと思っている。
へき地の自然は時に思いがけない体験をさせてくれることもあるから素晴らしい。







ポストライフ 常務理事 佐々木 貢
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